高倉健②
私の大好きな健さんの映画ベスト1は「幸せの黄色いハンカチ」であ、そして第2位が「遙かなる山の呼び声」であります。
説明不要な名作でありますが、語らないと記事にならないので・・。
「幸せの・・」が1977年、「遙かなる・・」が1980年の公開。両作品とも共通しているのが舞台が北海道であり、監督が山田洋次であり、共演に倍賞千恵子がいて、渥美清がちょっと味のある良い役でゲスト的に出演している。日本映画の珠玉の名作で、日本人が創る日本人の為の、創り手も演者も最も盛んな時期に撮られた映画と思える。
二つの作品は全く違う舞台設定で、それぞれが独立した全く別の物語なのだが、通じるものは多い。勿論、意図されて成ったものであるが。
「幸せの・・」は刑期を終えて出所した男の、残してきた妻(倍賞千恵子)が自分を待ってくれているのかという期待と不安を抱えながら、道中で知り合った若者達(武田鉄矢、桃井かおり)との触れ合いを描く。キャスティングの妙と言うか、本作でスクリーンデビューしたばかりの武田鉄矢の好演が物語を明るく、暖かくしている。実質的な主人公は武田鉄矢とも言える。
有名なラストシーンは結末が分かっているのに何度観ても泣ける。
「遙かなる・・」は、はずみで殺人を犯し、逃亡中の男が寂れた牧場に迷い込む。そこは夫を亡くした未亡人(倍賞千恵子)が一人息子(吉岡秀隆、北の国からの純である)と二人で暮らす牧場だった。男はそこで働き、母子と少しずつ心を通わせる。
女は男を意識しながらも母であり続け、微妙な距離感をもって接する。息子は男に父の姿を重ね、次第に男に親しみを抱くようになる。よくある設定と言えるが、これを過不足なく最高に描く監督や俳優が素晴らしい。初めてこの映画を観たのも中学の頃だったと思う。当時には分かるはずも無いが、大人になって観ると男と女の描き方が素敵過ぎる。いい歳を過ぎたおじさんとおばさんのストイックな、極めて不器用な関係。お互いに惹かれている。息子もおじさんが好き。でも、二人は男と女の関係にはならない。決して言わない。静かに湧き上がる水や空気のような、若草が芽吹くようなじっくりと育つ愛情。たまらないっすねぇ。
今もそうだけど山田洋次の作品には本当に悪い奴って、ほとんど出てこないんですよね。--「遙かなる・・」では倍賞千恵子がレイプされるシーンがあったと思うが、これは無くても良かったじゃないかと残念。おそらくは、母子の置かれた厳しい状況を見せる演出だとは思うが、もっと他に方法あったんじゃないかなぁ。--
健さんが殺人を犯したのは確か、亡くなった奥さんの葬式の日に借金取りが現れて奥さんを侮辱されて、かっとなって・・、て話だったと覚えている。この「仕方なさ」がいい。そして、いさぎ悪く警察から逃げてるっていうのも人間的でいい。
この映画で大好きなシーン。確か、何かで武田鉄矢氏も語っていたが、逃亡中の健さんをお兄さんが訪ねてくるシーンがある。逃亡犯の弟のせいで兄は教職を辞めていた。恨み言を言うわけでも無く、珈琲が好きな弟のためにコーヒーメーカーを差し入れる。健さんは申し訳なくって、有り難くって男泣きに泣く。当然、観ている私も泣く。勿論、何度観ても泣く。絶対泣く。今も思い出して、少しうるっときた。
そしてラストシーン。ついに捕まった健さんを護送する汽車に倍賞千恵子と以前は女を巡って仇だったハナ肇が乗り込んでくる。二人は刑事と健さんの隣の席でバレバレの臭い芝居をする。男に話を聞かせるためである。牧場を手放した母子は二人で刑務所に行った男をずっと待っていると。・・・。それを聞いた健さんがボロボロと涙をこぼして泣く。(観ている私も泣く。)泣いている男を見て、女は刑事に「いいですか?」と尋ねる。頷く刑事。そして女は男に一枚のハンカチを握らせる。勿論、黄色いハンカチを。
いい映画だ。日本の宝だ。また、観て泣きたくなった。
| 幸福の黄色いハンカチ 販売元:松竹ホームビデオ |
| 遥かなる山の呼び声 販売元:松竹ホームビデオ |
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